今、ヨーロッパを始め世界中の多くの国の関心が注がれているのがスウェーデン
海域のバルト海である。そこでは数日前から沿岸に住む住民によって、海上に停泊する国籍不明の船舶が目撃されているからである。
どうやらその船は領海を侵犯し、何らかの秘密行為を行っていた「外国船籍」の潜水艦のようで、潜水艦は事故を起こして航行が出来なくなってしまったため海底に停滞していて、酸素補給をするため時々海上に姿を現しているようである。
スウェーデン海軍は群島の海域で情報収集作戦を行うと同時に、首都ストックホルムから東に約70キロ離れたバルト海の海域で兵士200人以上とステルス艦、掃海挺、ヘリコプター
などを投入して不明船の発見に努めて
いる。また、国民に対して捜査海域から10キロ以内に近づかないよう呼びかけ、捜査海域の上空の航空輸送も全て中止している。
地元メディアは国内の防衛専門家らの見解として、スウェーデン海軍の軍事演習の監視あるいは偵察用機器の交換のため、外国の潜水艦がこの海域に入っていた可能性があると伝えており、それはロシアの小型潜水艦である疑いが強いと報じている。
また、フルトクビスト国防相
も「ロシアは軍事力の強化に向け巨額の投資を行ってきており、増強された軍事力の下でより多くの軍事訓練を実施している」、「バルト海周辺で発生している侵犯行為は、われわれが従来とは違った新たな状況に直面していることを示すものだ」と述べており、捜査中の不明潜水艦がロシア国籍であることを示唆している。
また、スウェーデン軍のゲランソン最高司令官は「われわれの目標は、それがいかなる国のいかなる船舶であれ、海面に浮上させることにある。必要とあれば武力行使も辞さない」と述べている。
スウェーデンは、1980年代から90年代初頭にかけて、何度も旧ソビエトのものらしい潜水艦を追跡している。最近では、ウクライナをめぐって東西の緊張が高まるなか、ロシア機がスウェーデン機を追跡して領空に侵入する事例も発生している。
問題は今EUとロシアはウクライナを巡って対立を強めており、経済制裁の報復合戦の最中であることだ。一歩間違えると、これまでのように今回の不明潜水艦を巡る動きは
「スウェーデン対ロシア」だけであなく、「EU対ロシア」のさらなる関係悪化をも進めかねないだけに、各国は固唾をのんで見守っているのである。