ワールドカップが終了したばかりのブラジルで開かれていた、中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカの新興5カ国(BRICS)による首脳会議において、懸案だったBRICS開発銀行の設立と外貨準備基金の創設が最終合意に達した。これで、BRICSは世界銀行に対抗する本格的な国際金融機関「新開発銀行(NDB)」を持つことになった。
発足時点の資本金は各国が100億ドル(1兆円)を出資し総額500億ドル
(5兆円)となる。2016年からBRICS5ヶ国の他、他の新興国や途上国のインフラ関連のプロジェクトなどに出資する。また、経済危機に陥った国に融資をするために総額1000億ドルの外貨準備基金も設立することになる。
これは、国際通貨基金(IMF)と同様な基金となる。
拠出する外貨準備金の内訳は中国が41%で410億ドル(4兆1000億円)、ブラジル、ロシア、インド
がそれぞれ18%で180億ドル(1兆8000億円)、南アフリカが5%で50億ドル (5000億円)。
これまで、経済危機に陥った国に対する資金融資はIMF(国際通貨基金)や世界銀行が行ってき
ており、韓国やアルゼンチンが経済危機から脱したのはそうした機関からの融資によるものであった。しかし、融資を受けられるのは親米的な政権に偏っているという不満が途上国に根強かった。
それゆえ、新開発銀行と外貨準備基金の創設によって、BRICSだけでなく
他の新興国や発展途上国にとって、米国が指導するIMFや世界銀行以外から資金提供を受けられることは、朗報である。
しかし、米国への対抗意識で足並みを揃え、新開発銀行や外貨準備基金創設にこぎつけたBRICSだが、水面下では互いの思惑がぶつかり合っている面もあることだけは、頭に入れおく必要がある。
とはいうものの、BRICS5ヶ国は世界の総人口のおよそ半分、国民総生産の4分の1を有するだけに、それら5ヶ国と新興国、途上国が一枚岩となったら、米国を始め欧州各国は脅威である。特にIMFや世界銀行を事実上牛耳ってきた米国は、長い間、マネーの力で世界を一極支配して来ていただけに、世界に対する影響力低下は避けられず大きな痛手になることは明らだ。
現にロシアテレビは、「7月15日は米国による一極世界が終演する日」として、歴史に刻まれることになるだろうと伝えている。自国通貨ドルを世界の基軸通貨として自在に操つる一方で、「陰の勢力」の手先としてIMFや世界銀行を動かして来た米国。
しかし、ここに来て、大国米国も自国の超巨大な債務によって動きが封じられ、シリア内戦、ウクライナ紛争、はては、イスラエル対パレスティナ紛争に対して、どれ一つとしてかっての米国らしき調停工作が出来ない状況に陥っている。そんな時、IMFや世界銀行の力が弱まるようなことになったら、米国の威信低下はより鮮明となってくるに違いない。
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そんな米国の威信低下に追い打ちをかけているのが、ここ数年間にわたる記録的な自然災害の発生である。西部沿岸部は高温と乾燥により山火事と干ばつ、東海岸沿岸部は大雨による洪水、間に挟まれた中部は竜巻、ハリケーン、落雷 降雹・・・・・・ 。
世界の覇権国家として戦後70年間にわたって世界に君臨し、ありとあらゆる紛争に参入する一方で、刷りまくったドル紙幣をばらまいて経済発展を続けて来ていたが、これから先、多少の浮き沈みはあるであろうが、もはや米国の威信低下は免れそうにない。
織田信長が死に際に唱ったと言われている
「人間50年、下天の内をくらぶれば夢幻のごとくなり」
。しかし、この50年という単位は人間の一生だけではないようだ。時の流れが加速度を増してきている今、超大国米国にとっても、同じように夢幻のごとくの一時となりそうである。そんな米国に取って代わろうとしているのは、新開発銀行本部の上海への誘致に成功したばかりか、10兆円の外貨準備金の41%を拠出することになった中国である。
しかし、その中国といえども、シャドウバンキング問題、チベットやウイグル族との民族問題、大気汚染問題、一人っ子政策による少子化問題、貧富の格差による国民の不平不満、・・・・・・・ など様々な問題を抱え、
一触触発の状態であることはかねてからお知らせしてきている通りである。こうして見てみると、世界は今 「
全てをご破算に願いましては!」の状況に向かって進んでいるのが分かるはずだ。
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