中国のトラ刈り、キツネ狩り

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中国のトラ刈り、キツネ狩り
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年末を迎えた2014年
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反腐敗キャンペーンの真相

 
 

 
 

 

 
 

習近平政権は2013年1月から、中国全土で反腐敗キャンペーンいわゆる「トラ狩り」を推進しているが、とうとう前中央政治局常務委員で党内序列ナンバー9の周永康氏を「党と国家の機密を漏えい」「巨額収賄と職権乱用」 などの容疑で、党籍をはく奪、刑事責任を追及することになった。

中国政界には、「刑不上大夫」(刑は大幹部には及ばない)という中国の諺をもじった、「刑は常務委員には及ばない」という風潮が存在していた。なぜなら、たった7人とか9人しかいない最高幹部を切れば、自己の政権自体が危うくなるとされていたからである。習近平はそこに手を付けたのだ。一か八かの大博打である。

「トラ狩り」というのはトラ、つまり党の上級幹部を対象にした反腐敗キャンペーンであるが、習近平はまた一方で、公安当局を使った官僚 (エリート)クラスを狙った「キツネ狩り」作戦も始めた。汚職に手を染め多額の資金を手に入れて国外に逃亡、もしくは資金を国外に送金 したり、家族を国外に移住させている官僚などを対象にしたものである。

そうした対象者の代表的な例が、オーストラリアに逃亡している元李鵬首相の部下や 、元国家副主席・曽慶紅氏の息子などである。1990年代の中頃から海外に逃亡した容疑者の数は16000〜18000人、不正に国外に持ち出された資金は8000億元(15兆5000億円)。これは当局の発表している数値で あって、実際はそれより遙かに多い資金であり人数であると言われている。

身に覚えのある中国共産党員 のエリートたちトラからキツネまでが、みな震え上がってしまった。しかし、周近平政権の狙う先はトラとキツネだけではなかった。汚職摘発の対象は中国軍部にまで及んでいたのだ。先のAPEC首脳会議が終わった直後、海軍司令部ビルの15階から海軍副政治委員の馬発 中将が飛び降り自殺をしたのだ。

さらに事件の数日後、吉林省軍区(7つある軍区の中の一つ)の現職副政治委員の少将が首をつった。実は海軍ではこの2ヶ月前にも南海艦隊の装備部長が飛び降り自殺をしている。装備部長 といえば兵器納入を担当する利権ポスト、自殺の理由は明々白々である。軍内の粛清はこうして進められていたのである。

 
 

 
 


逮捕が発表された党最高指導部の元メンバー周永康。その顔に無念さが浮かんでいる。
 

 
 

こうして、これまでに数千人の低級党員、数十人の高級幹部を起訴して来た反腐敗キャンペーンは
国民の賛同を得て周近平政権の評価を高めることに繋がっているかというと、実はそうではないのである。それはなぜか? 周近平はこの反腐敗キャンペーンを政権闘争の手段として使っていることを国民は知っているからである。

確かに調べてみれば、逮捕した周永康氏を始め軍の幹部などはみな、長年の政敵である江沢民一派 など政敵グループに属しており、身内からは誰も逮捕者が出ていないからことが分かる。考えてみれば今の中国共産党幹部が純粋な気持ちで党規粛清などを行うはずがない。みなおのれの権力を拡大し、我が身を守らんが ための政策であるのだ。

だとすると、軍政に渡る権力専有党争劇は、これから先、共産党上級幹部の分裂を呼び、1949年に権力を握って以後から始まった一党独裁の崩壊に発展することになる可能性は大である。現に、米政府内の非機密扱い諜報活動レポートはすでに、「北京指導部には深刻な亀裂が走っている」ことを伝えている。

先のAPECでオバマ大統領やプーチン大統領ら各国首脳に、清朝時代の衣装を着せてホスト役を務め、周辺の属国の王がこぞって朝貢した中華帝国時代の「万邦来朝」劇を演じた周近平も、政敵や人民解放軍からの反発 いかんによっては、政権を追われ自らが狩りの対象となる可能性は大である。

北京指導部の亀裂は国民の格差に対する不平不満の起爆剤となって、7区に分かれた軍部を巻き込んだ政変劇、暴動に発展するる ことになるかもしれない。私はその時は、そう遠くない内にやって来るのではないかと思っている。




 

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