中東各地で勢力拡大する「スラム国」
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シリアとイラクで次々と勢力を拡大しいる「イスラム国」
黄色い丸が「スラム国」の統制下に置かれたエリア
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シリア、イラク、パレスティナでの戦闘がますます激しさを増して来ている中、中東と北アフリカを巡る情勢に新たな3つの脅威と不安が加わってきた。それは、新たなイスラム武装勢力「イスラム国」の登場であり、リビアの内戦化であり、イスラエルとイランの対立である。
先ずは、最近のイラクを巡るニュースに頻繁に登場する、「イスラム国」と呼ばれる武装勢力の脅威について記すことにする。イラクはイスラム教スンニ派のフセイン政権が失脚した後、シーア派が主導権を握って来ていたが、スンニ派だけでなく北部のクルド族との間で争いが長期にわたって続き、繰り返されるテロで1日数十人の死者が出る悲惨な状況が続いて来た。
そこの新たに登場したのが過激派武装勢力「イスラム国」である。これで4つの勢力の争いとなり、スンニ派のマリキ首相が退陣し、新たにシーア派連合が推すアバディ首相が就任した後もなお、一向に収束の兆しは見え状況が続いている。
特に問題なのは、新たに戦闘に加わった「イスラム国」なる武装勢力が、アルカイダやタリバンなどこれまでのテロ組織より遙かに残虐な集団であることと、資金力が豊かであることである。米国のヘーゲル国防長官が「かってみたことのない脅威の存在」と発言しているのは、それ故である。
それとは別に、欧米諸国がこの「イスラム国」に対して特に脅威を感じているのにはまた別の理由がある。それは、米国や英国などの若者が「スラム国」勢力に引き寄せられ、既に1300人を超す若者たちが戦闘行為に加わっていることである。
これまで、「イスラム国」はインターネットなどを通じて、社会に不満を持った若者たちに過激派思想を広めてきた。その結果、現在の世界秩序は誤りだと考え、暴力を持ってしても打破しなければならないと考える若者たちが、この過激な思想に取り込まれ、次々と加わることになったのだ。
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「イスラム国」組織は豊富な資金力を背景に、次々と都市を制圧し勢力を広めている
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欧米やアフガニスタン、東南アジアの若者たちが、インターネットを通じて
次々と過激派思想に取り込まれ、「イスラム国」組織に参入している
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こうした若者たちは地縁や血縁がないため、「イスラム国」勢力の目指す残虐な行為をそのまま受け入れ、女、子供を含めた一般市民を大量に虐殺する戦闘行為をなんの躊躇もなく行っているのである。そんな「イスラム国」がシリアに留まらずイラクにまで勢力を広げ、各地で勝利をあげている裏には、豊富な資金源の存在がある。
それは、シリアのアサド政権に反対する湾岸諸国の大富豪たちによる多額の資金援助であり、もう一つは、シリアの戦闘で奪い取った油田や製油所から原油を横流しして得た巨額の資金である。こうした豊富な資金と武力を持った「イスラム国」勢力の参入で、統治が出来なくなったイラクに対して、米国はとうとう「空爆」という手段を行うことになった。
ここ数日の情報を見ていると、米国はイラクだけにとどまらずシリアの「イスラム国」の拠点への空爆も踏み込みそうな気配である。そうなると、つい数ヶ月前、アサド政権の政府軍に対する空爆を検討していた米国は、一転して、アサド政権を支援することになってしまう。敵の敵は味方ということになるのだろうが、それにしても、なんともおかしな巡り合わせである。まさに
因果応報による「倫理なき戦い」の始まりと言うことになるようだ。
もしも、このまま米国や欧米諸国がイラクやシリアの内戦に再び加わるようなことになれば、中東の情勢は一気に悪化し、ハルマゲドンへ向かって一気に踏み出すことになるかもしれない。それは、世界に恐怖と混乱を広め、「反キリスト」の登場を目論む「闇の組織」の目指すところとなってしまう。
次回は、「リビアの内戦化」と「イスラエル対イラン」について記すことにする。
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