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アルマゲドンへの導火線
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ウクライナの首都キエフのデモは独立広場を火の海と化し、26名の死者を出すところとなった。
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激しさを増す一方の世界の異常気象に目を向けている最中、エジプトやウクライナ、タイなどに代表されるように、世界各国の政治的混乱もますますひどくなってきており、次第に収拾がつかない状況と化して来ている。
死者の数が20万人を超したシリアの内戦。化学兵器廃棄の進展やジュネーブにおける政府側と反政府側の話し合いの開始で、内戦の終結に向けて動き出したかのように見えるが、実のところはみなその場しのぎ的な動きに過ぎず、混乱は深まるばかりである。和平会議が物別れになった後のシリアは地獄と化し、アルマゲドン(世界最終戦争)へつながる導火線となるかもしれない。
また、シリアを取り囲むアラブ諸国、エジプト、レバノン、イラク、さらにはアフガニスタンやパキスタンなど、どこをとっても混乱は一向に収まる気配はなくむしろ激化する一方で、戦闘部隊や一般市民の死者が何十人、何百人に達する日々が続いている。米国が仕掛けた湾岸戦争やイラク・アフガン戦争以来の死者の数は、すでに何百万に達しているのではないだろうか。
一方、アフリカ大陸に目を転じれば、中央アフリカ、ソマリア、ケニア、リビアなど国を二分する内戦状態が繰り返されている。最近の中央アフリカの状況を見てみると、百万人を超す死者が出ており、逃げ場を失った住民が周辺の国々へ非難しているが、避難先とてたいして状況に変わりが無いのが実情だ。
こうした状況は中東諸国やアフリカ諸国だけの話ではない。目を世界に転じれば、欧州のウクライナ、アジアのタイ、南米のベネズエラ
・・・・・・、その他でも、マスコミでは大きく取り上げられていないが、探ってみれば、その数は凄い勢いで増加している。ワールドカップや夏のオリンピックが行われようとしているブラジルとて、一歩間違ったら開催が不可能になるかもしれない。
「格差拡大」と「心の素」の露呈
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ベランダに溢れかえったゴミの山の上で、全裸で遊ぶ姉妹。まさに赤貧の一言である
(中国・河北省)(上下とも、月刊誌「SAPIO」3月号より)
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北京では、寒さを防ぐためにマンホールの中に住み着くホームレスが続出している
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経済のグローバル化で後進国や発展途上国は豊かになり、国民の生活レベルは年々向上しているはずなのに、なにゆえ苦境に喘ぐ人々が激増し、デモや暴動、紛争がますます増えて来ているのだろうか? 原因を挙げたらきりがないが主要な要因は国民の間に広がった、とてつもない程の「格差」と「心の素」の露呈ではないだろうか。
日本にいては、貧富の格差がどれほどひどいものか分かりにくいが、それは驚くほど凄い状況になって来ているのだ。上に掲載した写真を見れば分かるように、世界第2の経済大国となっている隣国・中国でさえ、タックスヘブンに何十、何百億のカネを隠し、高価なブランド品を買いあさっている超富豪がいる一方で、ゴミの山となったベランダで全裸で遊ぶ姉妹(湖北省)や寒さを防ぐためにマンホールに住みついているホームレス(北京)がいるのである。
一方、「心の素」の露呈によって民族や種族の違い、さらには、宗教観、価値観、世界観などの違いが露わとなり、人間の心や考え方が二分され始めて来ている。言うならば、各自のエゴの発露である。それは、これまで培ってきた協調性や隣人愛といった和合の精神を吹き飛ばしてしまう面を持っているため、あらゆる分野において争いが激化してきているのである。赤貧と超富豪の間には、天と地程の差があるのだ。
その中でも激しい分裂の元凶となっているのが、宗教を元凶とした争いである。最近は、特定の民族が信仰する宗教、すなわちイスラム教やキリスト教、仏教といった宗教間の争いだけでなく、同じイスラム教の中でのスンニ派とシーア派といった宗派間の争い、また、同じスンニ派、シーア派の中をさらに二分する過激派と穏健派の争い、さらにはそこに、アルカイダなどのテロ集団が加わってより複雑な争いとなって、もはや収束のつかない状況となって来ている。
ウクライナの惨状
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上下の独立広場の写真を見ると、ウクライナはもはや内戦一歩手前であることが分かる。
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オリンピックで浮かれているロシアの西隣・ウクライナでは、政府と反政府側の紛争が激化してきている。東部に住む住民は隣国ロシアとの交流を求め、西側住民はEU(欧州連合)への仲間入りを希望している。そうした価値観や生活感の相違があるところに、ヤスコビッチ大統領がとった、親EU寄り外交からロシア寄り外交への転換が火付けとなって、国を二分する紛争へと発展してしまったのである。
昨日19日の首都キエフでの大規模デモでは、治安部隊とデモ隊の双方に26名の死者と500人を超す負傷者が出て、1991年のソ連邦からの独立以来
、最悪の事態となっている。デモ隊による石材の投石や火炎瓶の投げつけ、治安部隊によるプラスティック弾やペレット弾による反撃。
独立広場周辺で燃え上がる野党本部ビルや鎮火した後のビル群の焼け跡は、内戦中のシリアの状況と何ら変わらない惨状を呈している。
エジプトにしろタイにしろ、これまでのデモや紛争の様子を見ていると、一旦収まったかに見えても、すぐに再発、そしてその激しさは次第に増してきている。「心の素」の発露によって、ますます各自の考えの違いが分かれていくことになる一方、協調性や隣人愛が失われていくため、あらゆる分野で争い事が増加し激化していくことは、もはや避けて通れそうになさそうである。
その中でも、我々が最も恐れなければならないのが、隣国・中国の暴動と内戦である。それについてはこれまでに色々の角度から伝えて来ているので、読者には理解してもらっている事と思うが、今一番心配なのが、他に類を見ないあまりに急激な経済成長によってもたらされた反動である。
中国経済の破綻をきっかけとした暴動の発生が、刻々と近づいて来ていることについては、また回を改めて記すことにしよう。全裸で遊ぶ赤貧の姉妹とマンホール暮らしのホームレスの姿だけは、しっかり心に刻んでおいて欲しいものだ。
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