先週末6日のニューヨークの株式市場はダウ平均が16924ドルと史上最高値を更新し、17000ドル台に今一歩の所まで迫った。5月の雇用統計が先ずますの結果となり、市場は米経済が年初の寒波の影響から脱したと判断したようである。
しかし、2ヶ月続いて新規雇用者数が20万人を超えたとはいえ失業率は6.3%のままであり、雇用人数増の主たる要因が臨時雇用増によるものであることを考えると、米国の雇用状況が大幅に改善されたり、景気が一段と上向いているわけでないことは確かだ。
そうした状況下で株価が史上最高値を次々と超えていくことは、どう考えても不自然である。6.3%と言う失業率もこれまでに何度も書いているように、就職を諦めてしまった人の数が増えているためで、実際の数値は9%台に達していることは
既に承知の事実である。狂気の株式市場は、そこに群がるカネの亡者どもが「えせデーター」を元に、株価上昇のための相場を作っているだけなのだ。
どうやらこの調子だと、昨年11月29日付けの「狂気の米株式市場」欄に記したように、
上昇相場はいましばらく続き、次なるピーク18000ドルを目指すことになりそうである。正常な人間の目から見たら狂者や亡者どもの行動が理解できないように、今の米国の株価や債券市場の状況は、もはやまともな神経では推し量れない領域にまで達している。「まだはもう」という金言にある「もうの時期
」が来るまで、
今しばらく時間がかかりそうである。
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欧州もまた異常
株式市場の異常さは米国だけではない。欧州もまた常軌を逸した状況にある。5日には、欧州中央銀行(ECB)が3つの政策を発表した。
@ ユーロ圏18ヶ国の政策金利を現行の0.25%から史上最低の0.15%に引き
下げる。
A 民間銀行が欧州中央銀行に預ける預金の金利も、現行の0%からマイナス0.10%に
引き下げる。
B 欧州中央銀行は各金融機関に対して、総額4000億ユーロ(56兆円)規模の大量の
資金を供給し、4年間返済を免除する。
@の金利の引き下げは我が国や米国でも行っていることなので、特段の驚きはないが、なんと言っても驚くのは、AとBである。各国の民間銀行が、銀行の総元締めである欧州中央銀行に余った資金を預ける場合、金利が0ではなくマイナスとなる「マイナス金利」を設定したことである。このような措置はかって行われたことのない異例中の異例な措置である。
また、これだけ世界中に資金がだぶついていると言うのに、今また、56兆円ものカネを市場にばらまくことになるBの措置も、信じ難い行為である。
@、A、B共にみな企業などに貸し出しを増やすための措置であることは言うまでもないことだが、これだけの措置をとるということは、今、欧州の経済がいかに低迷しているかを如実に物語っている。
そうした記録的な景気低迷の状況下にありながら、この1年、なんとドイツを始めフランスや英国などの株価は上昇し続けているのである。これもまた、なんとも説明のつかない異常な事態であることに変わりはない。中でもドイツの株価は、7600ポイントから10000ポイントへ何と30%も上昇している。こうしてみてみると、欧州の株式市場もまた狂気の状況にあることに変わりはないようである。
こうして拝金至上主義の輩が創り出した「幻想の世界」が今地球を覆い始めてきていることは、なんとも恐ろしいことである。
金銭欲や物欲には節度を持って、そうした流れに決して飲み込まれないようにしたいものである。