今イギリスを訪問中の中国の李克強首相は複数の貿易協定に調印、2兆4000億ドルもの契約に合意した。景気低迷に喘ぐイギリスにとっては願ってもない商談成立で、キャメロン首相も思わず顔がほころんだことだろう。イギリスBBC(電子版)も記事としては人権問題などについて厳しいことも書いているものの、両首相双方が笑顔の友好ムードの写真を掲載している。
イギリスとしては、国家のインフラ整備に関して、依然として中国マネーの投資を期待しており、中国政府もまたイギリスでの高速鉄道網や原子力発電所の建設事業などに対する投資意欲は旺盛で、両者の思惑が一致したというわけである。
今回私が驚いたのは成立した2兆4000億という商談額の大きさではなく、李克強首相がウインザー城でエリザベス女王と面会したことである。というのは、まったく例外がないわけではないが、女王との謁見は各国のトップ、中国で言うなら習近平主席にしか許されないものであるからだ。
どうやら経済力にものを言わせた今の中国が望めば、長い間の慣例など何処吹く風、全て要望が叶うようである。そういえば、2009年にまだ副主席だった習近平氏が訪日の際、天皇陛下との会見を要望し、慣例となっている30日前までの申請期限を無視し、直前の申請でごり押ししてきたことを思い出す。
信じ難い会見成立の裏には、我が身優先の当時の鳩山由紀夫首相と小沢一郎民主党幹事長のもくろみがあったわけだが、今回のエリザベス女王とナンバーツー李克強首相との面会も、キャメロン首相の「慣習やメンツより利益優先」の考えが優先されたと言うことのようだ。
「ノアの時代と重なる今」で記したように、今の中国にはカネが全て、地位名声が全ての風潮がヘドロのように渦巻いており、それらに対するおぞましいまでの貪欲さが満ちあふれている。それが、今回の中国政府の常識を逸した「恫喝的外交による異例の会見」となって現れているわけであるが、そのような「振る舞い」を受け入れる政治家も政治家であるなら、世間も世間である。
まさにここにもまた、私が言い続けてきた「今さえ良ければ」、「自分さえ良ければ」、「カネにさえなれば」の「三さえ主義」が顔を出してきているようだ。なんとも情けないことだが、全ての価値判断がカネとエゴに傾いてしまった今日の社会は、社会生活の根底をなす価値感においても、自然界の法則を逸脱した洪水発生前のノアの時代に重なってしまったようである。
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