宗教は戦争の元凶と化した
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ISISの攻撃で炎上する政府軍戦車(イギリスBBC)
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2011年に米国軍が撤退し一時の落ち着きを見せていたイラクでは、再び宗派間の対立による激しい戦闘が始まり、今やシリア同様の内戦状況へと向かおうとしている。
イラク北部の第2の都市・モスルを制圧した国際テロ組織アルカイダ系の武装組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」は、スンニ派住民の支援を受けながら目を見張る勢いで
、次々とバイジやティクリートなどの主要都市を制圧し、南下を続けいる。もはや首都バグダッドでの戦闘が始まるのも時間の問題である。
既に制圧されたモスルからは50万人を越す難民が避難を始めており、これから先、各都市での戦闘が激化すれば行き場を失った市民たちは次々と国の内外への避難を始めることにな
るに違いない。まさに、アラブの主要国家・イラクは第2のシリアとなろうとしているのだ。
人々を幸せに導くはずの宗教は、このように宗教間の対立だけでなく宗派間の対立をも引き起こし、人々の住む家やたくさんの命まで奪おうとしている。
いかなる宗教観も教義も戦争の具に使われたら魔手と化してしまう。イエスもマホメットもさぞやお嘆きのことだろう。
イスラム教は教祖モハメットの死後、スンニ派とシーア派に分かれ、その後長きにわたって憎しみと対立の歴史が続いてきている。サウジアラビアやカタールはスンニ派が主導権を握っている代表的な国家である。一方、イランはシー派の国家としてとして君臨し、現在シーア派が政権を握っているシリアやイラクと友好関係にある。
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イラク政府軍は敗走を続けている
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イラクは間もなく3つに分裂する
イラクはこれから先、スンニ派のISISとマリク首相率いるシーア派政府との間で激しい内戦状態が続くことになるものと思われるが、北部の油田地帯の実権を握っている少数民族クルド族は両派の争いに乗じて独立する可能性があり、
油田という重要な収入源を分散したイラクは、やがて3つの国家に分裂することになりそうである。
そうした動きが続く中、イラク政権やシリア政権を支持し支援することになるイランと、サウジアラビアやカタールとの間に激しい対立感が広がり、イスラム教徒間の大規模な紛争が発生することになるかもしれない。国内紛争から国家間紛争への発展である。
さらに、軍出身の新大統領の誕生で治安回復が期待されているエジプトも、既にHP「エジプトは安定化に向かうか?」で記したように、そう遠くない先に再びイスラム原理主義者と穏健派との間の争いが再発し、内戦状態が発生する可能性が強いだけに、我々は遠からずして、リビアをも巻き込んだアラブ世界全体の紛争の地獄絵を見ることになるかもしれない。
メソポタミア文明以来のカルマが渦巻く中東、それを引き出して火をつけたのは他ならぬ米国である。次回は1991年の湾岸戦争以来、イラク戦争、アフガン戦争等を通じて米国が中東で蒔いてきたカルマの大きさがいかに巨大なもので
、その先に待ち構えている未来がいかなるものであるかを見てみることにしよう。
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イラクでも大量の国内難民が発生、ここでもまたかわいい子供が犠牲となっている
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