ヨーロッパの経済危機が取りざたされ始めてはや3年、これまでは世界の関心はギリシャに注目が集まってきていたが、この夏以降その関心はもっぱらスペインの財政問題へと移りつつある。そんなスペインの国民生活の想像以上に厳しい実体が表面化し始め、生活困窮者の急増がクローズアップされるところとなって来た。
赤十字社と言えば、戦争や大規模な事故や災害の際に人道的支援を行う慈善団体として認識されているが、スペイン赤十字社は今回初めて国内の生活困窮者を助けるための大規模な募金活動を開始し始めた。経済危機で大きな打撃を受けている人々を救うためである。
また、各種の教会や慈善団体など400以上の団体が支援活動に追われ、日常生活に必要な飲み物や食べ物を生活困窮者に配布する作業を続けているが、需要が供給を遙かに上回る状況で手が回らない状況下に陥っているようである。
政府の財政悪化を防ぐためのさらなる緊縮政策は失業率の上昇をもたらし、現在スペインでは4人に1人が失業状態。南部地方では3人に1人が職に就けない状況が続いている。その結果、その日暮らしがままならぬ人々が急増し、各種の支援センターには早朝から自宅に持ち帰るための食料を求める人々の列が出来ている。
今、世界はスペイン政府がいつ更なる財政支援を欧州安定メカニズム(ESM)に求めるかに注目しているが、政府は支援要請を先延ばし続けている。その理由は、ESMの支援には厳しい緊縮財政策の実行が条件となっているからである。
これ以上の緊縮政策の実行は年金のカットや国家公務員の削減を更に推し進めることとなり、生活困窮者や路上生活者を増やすことになるだけに、政府は二の足を踏まざるを得ない状況にあるのだ。
失業率が5%台に抑えられている我が国でも、ここに来て金を目当てにした物騒な事件が発生し始め、人々の心を暗くしてきている。ギリシャやスペインでは日本を遙かに上回る25%を超す失業率が数年続いていることを考えれば、多くの国民がいかに厳しい状況下に置かれているかが分かろうというものである。
いずれ、スペイン政府もユーロ各国に支援の要請をせざるを得ない状況に追い込まれるはずである。それは即、市民の生活を一段と厳しい状況に追い込むこととなり、ストライキやデモがこれまで以上に数を増し、その規模を大きくすることになる。これから先、一段とそうした暗いニュースが伝えられることになりそうだ。
連休になると各地の高速道路が大渋滞となる日々が続く日本、厳しいながらもまだまだ紅葉見物に出掛けられる我々は幸せである。しかし、グローバル化した今日の世界を念頭に、「明日は我が身」であることをしっかりと肝に銘じておきたいものである。時の流れの速さを考えると、来年の今頃はとてもこんな悠長な記事を書いてはおれないに違いない。