北京に甚大な被害をもたらした7月21日の豪雨。政府は死者37人、被災者190万人と発表したが、その後、一向に数字が更新されていないことから、市民からの不信
の声高まっており、インターネット上では、死者が1000人規模に達しているとの憶測が飛び交っている。
大紀元日本によると、特に甚大な被害を受けた同市房山区では、市バスを含めた水没車100台あまりが引き上げられ、その中から大量の死体が見つかっているようである。被害の状況が尋常でないことを裏付けるかのように、豪雨が発生した
4日後の25日には、北京市政府は郭金龍市長と吉林副市長の辞任を発表している。
郭金龍氏は2008年から北京市長を務めており、今月3日、首都の北京市トップ共産党委員会書記に選出されたばかりである。氏は胡錦涛国家主席との関係が深いとされ、今秋の党大会で政治局入りが確実視されていた人物だけに、尋常なことでは辞任、それも副市長と揃っての辞任などあり得ない。
一方、香港のテレビは政府が報道機関に対して異例の通達を流したことを伝えている。それは、マスコミは被害状況が甚大であることや、悲惨な被災者の様子を伝えることを自粛し、救済
劇の美談を報道せよというものである。ここまで政府が気を遣っていると言うことは、被害の実態が国民や海外に知られることを恐れていることの何よりの証拠である。
政変に進む可能性あり
ここ数年、異常なまでの経済成長を遂げる中、オリンピックや万国博覧会、アジア大会などを次々と開催し、巨大な施設や目を見張るような大量なビル群、住宅施設などを建設
してきた。しかし、住民の安全に関わる地下工事や下水道施設の整備などに手を抜いてきたため、今回、被害が拡大したと住民の強い怒りを買って
おり、事態は思わぬ方向に進むことになるかもしれない。
ニューヨーク・タイムズ(中国語版)は「北京の排水システムはなぜ脆弱か」と題する評論で、北京の地下インフラ建設に携わる専門家の見解として、排水システムの不備は資金不足によるものではなく、中国の地下空間では「電力や通信、地下鉄など、GDPに直結するインフラ建設が優先」されており、下水道は二の次に考えられているからだと伝えている。
今回の北京市長・副市長の辞任劇が重慶市のトップであった薄熙来氏の退任劇の再来となれば、江沢民派の牙城だった北京市の政権を奪還したばかりの胡錦濤主席にとって、腹心の辞任は重大な打撃となる。
そればかりか、胡錦濤主席が数ヶ月後にその座を去ることになっているだけに、共産党内部の争いが今回の辞任劇がによって一段と激しさを増すことになると、全土を襲い始めている自然災害と相まってデモや暴動が続出し、共産党政権の崩壊へと進む可能性がさらに大きくなってくるかもしれない。
明日はまた米国の災害の状況を報告することになるかも知れない。昨夜から暴風雨と竜巻、洪水に備えて4000万人のアメリカ人が眠れぬ夜を過ごしているからである。