南欧の熱波と山火事
欧州は財政危機が続く南欧諸国と比較的安定化して いる北欧との色分けが、気候にも現れているようだ。
梅雨明け宣言が取り消されそうな悪天候が続いている日本列島であるが、南ヨーロッパでは7月の初めから高温と晴天の日々が続いている。しばらくは東部地帯だけだったが先週からは西部地域のイベリア半島でも熱波に襲われ、マドリードでは体温を上回る39度の高温となっている。
こういた高温と乾燥によってギリシャ、イタリア、スペインでは大きな山火事が発生し、財政危機で苦しむ中、国民は「泣き面に蜂 」となっている。中でも南イタリアの有数な リゾート地であるシチリア島の山火事は延焼範囲が広がって消火が困難な状況に追い込まれているようである。
米国の干ばつ
干ばつでトウモロコシが全滅状態となった インディアナ州エバンズビルの農場(ロイター)
一方米国の6月は、中西部と南部が過去3番目の乾燥した月となったようである。インディアナ州のインディアナポリスでは雨の量がわずか2ミリしかなく、平年の雨量の2%となっている。米国の主要な穀倉地帯である中西部は今月に入っても猛暑が続いているため、農作物の生産が大幅に減少することになるのではないかと危惧されている。
牧場の草は枯れて土地は乾ききり、農家はエサ不足のため牛の飼育がこれ以上続けられなくなっている。政府は広範囲にわたり緊急事態を発令し、農務長官は記者会見で、雨乞いの儀式や踊りがあったら良いのに、と 嘆いている。 さんざ馬鹿にしてきた先住民の雨乞いをうらやむようではなんとも情けない話である。米国は暑さで汗をかき、今度は穀物価格の値上げに震え始めているよう だ。
こうした状況を受け、モルガン・スタンレーは19日、干ばつの継続と在庫減を予想し、2012/13年のトウモロコシと大豆の価格見通しを大幅に引き上げた。同社は、トウモロコシと大豆の需給ひっ迫と記録的に少ない在庫見通しから2012年下期に短期間ではあるものの価格が急上昇する可能性が 大きいと、と述べている。
2012から13年にかけての平均見込み価格は、既にトウモロコシは1ブッシェル=7.85ドルと37%アップ、、大豆は16ドルと26%アップ、小麦は1ブッシェル=8.20ドルと30%アップとなっている。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)が発表した「7月5日から9月30日までの干ばつの見通し」の地図 (下図)を見ると、米国国土の70%近くが干ばつが持続するか悪化するエリアとなっている。これでは、穀物の先物価格が値上がりするわけだ。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)が発表した米国の干ばつの見通し(In Deepより転載)
南半球の寒冷化
NOAAの発表を見ると、2012年6月の全世界の陸地上の平均気温は、平均より 1・07度高く、1880年以来最も高い気温だったようである。しかし、すべてのエリアが高温だったわけではなく、既にお伝えしているように、英国は1910年以来の最大の雨量に見舞われ、秋のような肌寒い日が続いており、フィンランドも2004年以来の寒い6月を経験 している。
冬のニュージーランドやオーストラリアも平年より低い気温で、特にニュージーランドは130年ぶりの寒さに見舞われている。さらに、南アフリカ からは凍死者が続出しているというニュースも伝えられている。こうしてみると、決して地球全体が温かくなっているわけでないことが分かる。
一昨年、南米のペルーをはじめとする6ヶ国で200人近い凍死者が出たことや、パラグアイやブラジルで何千頭もの牛が牧草地で凍死したことを考えると、どうやら北半球では暑く、南半球では寒い気候になって来ているように思われる。
だとすると、NOAAの発表した1・07度の6月の平均気温の上昇は地球上の平均値であるからして、北半球の米国や南欧に限れば上昇 度はもっと大きく、3度近くに達してい そうである。しかし、来年になったら高温と低温のエリアが逆転している可能性もあるので、よくよく世界の気象状況には気を配り、食料の備蓄は怠らないことである。