ギリシャの窮状

 

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エーゲ海に浮かぶ島の切り売りが始まる

 


 
 


売却されることになったエーゲ海に浮かぶ島々

 


ユーロ危機が進む中、市場の関心はこのところギリシャからスペインとイタリアの財政危機に移った感があったが、ここに来て再び、危機の火付け役となったギリシャに注目が集まっている。 ギリシャ国債の返済の期限が近づき、そのために、財政削減のための追加策が実行に移されようとしているからである。

そんな中、ギリシャ政府の悲しいまでに厳しい財政状況が浮き彫りになってきた。政府は財政赤字を削減するために、国有地の48の島を民間に売り渡すことに決めたのである。それはエーゲ海の青い海に浮かぶ島々、手つかずの自然が残る美しい島々である。

ギリシャ憲法では島の売却は禁じられているため、更新可能な50年間の長期貸し出しの形態を取るようであるが、 それは事実上の売却処置である。島の住民からは売却後の乱開発を怖れ、不安の声が上がっている。 一部の島の購入者が商売目当ての外国人となることもあり得るからである。

こうした島の売り渡しは、政府がこれから実行しようとしている資金調達計画の一部に過ぎず、これから先には国鉄や高速道路の民営化も検討中で、 政府は2015年までに190億ユーロ(1兆9000億円)の資金を集めようとしている。

岩だらけの小さな島の領有権で争いが始まっている国もある一方で、国の象徴とも言える美しいエーゲ海に浮かぶ島、50近くにも及ぶ島々を 切り売りしなければならない国もあるのである。それも近代史の先駆けとなったあのギリシャである。かっては自信と活気に満ちていたギリシャ国民は 、今や失望と怒りのどん底に落とされようとしているのだ。

 

首都アテネでデモ

 

 
 


首都アテネでもゼネスト

 


こうした状況にまで追い込まれたギリシャ。首都アテネでは追加緊縮策に反対する数万人規模のゼネストが行われ、6月に新政権が誕生して以来の最大規模のデモとなった。参加者のほとんどが中間所得層 の市民であったようだが、その一部が警察と激しく衝突し、火炎瓶と催涙弾による応酬が行われる事態となった。

ギリシャは向こう2年間で115億ユーロ(1兆1500億円)の緊縮削減を行わないと、欧州連合の救済基金(EFSF)からの315億ユーロ(3兆1 500億円)の融資が受けられず、政府は支払いの資金が底をつきデフォルトとなってしまう。それゆえ、なんとしても 急いで財政削減を実行しなければならないのである。

しかし、政府が外部に支援を要請してから2年が経過した今、生活環境は悪化する一方であることから、国民の多くは政府が行おうとしている戦略は間違っていると感じて来ているようである。失業者の数は増える一方で、失業した人々は加入していた医療保険からも外れ、今や生まれたばかりの赤子に基本的な検診すら受けさせられない失業者が次々と出てきている ようである。それだけに、これ以上の緊縮策はもはや受け入れ難い状況となっているのである。

現在はまだ、削減策が協議されている段階に過ぎず、実行に移されているわけではない、その段階において、これだけ削減策に反対するデモが発生し混乱が広がっていることを考えると、数ヶ月先に削減策が実行に移され、年金や給与のカット、公務員の削減が 現実となった時にはどうなるのか、想像しただけで恐ろしくなってくる。

私はギリシャはこれから先も、ユーロ圏が崩壊するまで脱退せずに残ることになるだろうと考えている。しかしそのためには、緊縮のための財政削減策が次々と実行に移されることは避けて通れない道である。その結果、職を失い年金をカットされた市民の不満が爆発し、大きな暴動へと発展することになる可能性は大である。年を越し春先辺りから、我々はそうした悲惨な光景を目にするようになるのではないだろうか。

今回のエーゲ海の島々の売却と、首都アテネでの暴徒化した市民と警察との間の火炎瓶や催涙弾による応酬を見ていると、その感が益々強くなってくる。 昨日27日、スペインでは政府が400億ユーロ(4兆円)の財政削減を盛り込んだ2013年の緊縮予算案を承認し、銀行への支援も決定したようである。

いよいよ、欧州連合(EU)と欧州中央銀行(ECB)に対し銀行融資と国債の買い取りを要請することになるものと思われる。となると、これから先、ギリシャに次いでスペインでもギリシャ同様の大規模なゼネストやデモが頻発することが予想され、2013年はさらに暗いニュースが世界を駆け巡ることになりそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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