世界経済への悪影響が懸念されるアメリカの「財政の崖」のタイムリミットが いよいよ1日後に迫って来た。「財政の崖」とは、 12月31日をもってブッシュ減税が打ち切られて事実上の増税となり、併せて強制的な歳出削減 が実施 されることによって、米国経済の成長率が一気にマイナスへと向かい、失業率も再び9%台から10台へと向かうことを意味している。
つまり、リーマンショックを上回る経済的危機の到来を意味しているわけであるが、実はこれとは別に国家の借入 金額が法的に決められた16兆3940億ドル(約1400兆円) という債務上限を超える日が、同じ12月31日(日本時間1月1日)となる ことが明らかとなったのである。
ガイトナー財務長官が米議会指導部に送った書簡の中で、年末の31日には、米国の債務が上限の16兆3940億ドルに達する見通し であることを伝えていたからである。それを受けて、ブログ「ロシアの声」(The Voice of Russia )は、ロシアの各紙が先週一斉に「米国、31日にデフォルトに達する見通し」と題 するニュースを流していることを報じている。
ガイトナー財務長官によると、財務省は財政赤字を賄うための「緊急措置」を開始しようとしており、政府はこれらの対策によっておよそ2000臆ドル(約18兆円)を得ることが可能となり、これにより、上限を引き上げるための期間として、議会に2ヶ月 の猶予を与えることができると述べている。
しかし、ロシア各紙の報道を見ると、ロシア政府はそうした処置は 頓挫するか、仮に実施されたとしても単なる2ヶ月の延命策過ぎないと考えているようである。
となると、議会の審議次第では年明け早々、1月1日には米国は「財政の崖」に転落するだけでなく、デフォルト (国家財政の破綻)にもなる可能性も大きいことになる。それにしても、「財政の崖」から足を踏み外すことになる日と「債務の上限超え」の日が同じタイミングになるというのは、なんとも奇妙なことである。さらに、当面の問題としては、国家破綻につながる「債務上限超え」の方が緊急度は高いはずなのに、なにゆえ今この段階で表面化したのかもおかしな点である。
私には、これまでの議会審議はいかにも作られたシナリオの上で行われている、茶番劇的に過ぎないように思えてならないい。 いずれにしろ、もしも米国経済と国家財政の破綻が同時に起きることになるようなら、オバマ大統領は禁じ手の切り札を切らざるを得なくなって来 ることは間違いない。その禁じ手とは、12月20日のHP「CNNが伝える不可解なニュース(2)」で伝えた、ニュードル札発行とデノミの実施である。
昨日のテレビ朝日では、「財政の崖で熾烈な交渉」と題して、議会審議のリミット が間近に迫っていることを伝え、最後に斜めに傾いたワシントンの議事堂の姿を背景に、朱文字で「リミットは1日午後2時(日本時間) 」と書かれた字幕が映されていた。
ロシアだけでなく我が国も政府上層部やマスコミの一部はその事実をすでに知らされている可能性が強いように思われる。 ただ他国の財政問題だけにオバマ大統領が発言するまでは、口にすることが出来ない状況に置かれているのではないだろうか。