9月5日から各国要人との会談を相次ぎキャンセルし、公の場に2週間ほど姿を見せなくなった習近平国家副主席。彼の動向については、重病説や暗殺説、権力闘争発生説など様々な噂が飛び交い、世界中から関心が寄せられていた
が、先月末2週間ぶりに姿を見せたことで、先ずは一件落着となった。
ただ習近平氏が姿を消していた要因については、これといった情報が伝わらないまま今日に至っていたが、10月16日付けで大紀元ニュース社が報じた情報によると、同氏は中央政治局の会議で最高指導部を退き、中央政治局委員として党運営に関わる
ことを伝えていたようである。「国家主席には昇格するが党最高ポストの総書記には就かない」というわけである。つまり、首相にはなるが党の代表(総裁)ポストには就かないというわけである。
胡錦涛・温家宝政権と江沢民派の政治的駆け引きが膠着化し、薄煕来氏の処分や次期指導部の人事などなどが一向に進まないことに苛立ったことが決断
の要因だったという。しかし、彼のこの突然の辞退表明によって、結果的には共産党の長老らが事態収拾に乗り出すこととなり、薄煕来氏への厳しい刑事訴追や第18回党大会の開催日などが確定され、情勢を一気に変えさせるところとなった
というわけである。
どうやら、指導部内で重慶事件を発端に胡・温政権と江沢民派との間に想像以上の激しい権力闘争が勃発し、薄氏への処分や党大会の日程など重要事項に関して結論が出
ないまま、党大会を前にして、中国共産党政権は分裂の危機に晒(さら)されていたようである。
ひとまずは、次期最高指導者の突然の辞意という信じ難い手段が功を奏し、権力闘争は一時的に止まったものの、後に強いしこりと次なる権力争いへの火種が残ったことは間違いない。尖閣諸島問題に国民の目を向けさせ、
国際的マナーを犯してまでの行動の裏には、指導部内の醜い内部闘争を隠す目的があったものと思われる。
しかし、薄煕来氏への厳罰に反発する勢力との間に再び権力闘争
が再発しないという保証はないだけに、11月以降、習近平氏が国家主席となって率いる中国共産党政権は、党の内部分裂の危機と格差に抗議する民衆蜂起という爆弾を抱えて、厳しい決断をする場面に遭遇することになりそうである。
大統領選挙後の「財政の崖」に立つ米国、ギリシャやスペイン等の南欧諸国の財政危機に揺れるユーロ圏、総選挙の時期を早めてイランへの先制攻撃の準備を進めようとしているイスラエルのネタニヤフ政権、きな臭い気配が漂いはじめた尖閣諸島を巡る日中米の軍事的な動きなど、これから先、年末から2013年中盤に向かって世界は一段と厳しい状況を迎えそうである。
追記、上記ゴシック部分を一部修正
香港の中国人権民主化運動情報センターは29日、11月の中国共産党大会で李源潮党中央組織部長が党トップの総書記に就任するとの観測を示した。また、胡錦濤氏は総書記と国家主席から退いた後も軍トップの党中央軍事委員会主席の座を保つようなので、
国家主席となる習近平氏の立場が微妙になりそうな気配である。
さらに同センターは13日、習氏の動静が一時途絶えた理由として、健康診断で肝臓に「極めて小さながん」が見つかり手術で摘出したとする関係者の話を伝えている。この情報が本当なら、習近平氏が党のトップの総書記と軍事委員会主席のトップのポストから外れるのには、体調の問題があるのかも知れない。いずれにしろ、党内の一本化の道は険しいようである。