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茶番劇終了

 


 
 


17日間にわたった演じられた茶番劇の劇場と化した議事堂

 

 

新年度予算と債務上限問題の茶番劇が終了した。期限内予算不成立問題については毎年恒例となっており、債務上限審議も2011年8月以来2度目の茶番劇であった。 こうした自国民や他の債権国を愚弄した行為は、一部の州政府ならいざ知らず、中国に対する130兆円、日本に対する110兆円を 含む数百兆円という外国に対する膨大な借金を抱えた国家のやることではない。

今回の茶番劇は米国の威信を傷つけた程度ではすまされない問題で、大統領や両院の議長が深々と頭を下げて当然の行為である。本格的なデフォルトに至ったら、我が国は年間の国家収入のおよそ2.5倍に当たる米国国債を紙くずにさせられてしまうところであったのだ。

今回は、期限の先延ばしという単なる延命工作によって一時的に難を逃れたが、年明け早々から同じ茶番劇が繰り返されることになるのは必至である。 ここに来て、世界や米国を取り巻く経済や財政悪化懸念は日に日に強まってきているだけに、事態が先延ばしされた分、次回の民主、共和両党による政治劇 が一段と厳しくなって来ることは間違いなく、「茶番劇」が生々しい「現実劇」となって来る可能性は大である。

事態の成り行きについては、これから先随時見守っていくこととするが、今回は、底の見え透いた茶番劇が進行中に発生した、米国の明日を暗示する一つのトラブル劇 の様子をご紹介することにする。それは、茶番劇が現実劇と化したときの大混乱と暴動の発生を想起させるに十分な事例であった。


フードスタンプを巡るトラブル

 

 
 


今回17州で使用が出来なくなったフードスタンプカード

 


アメリカには低所得者を支援するシステムとして「補助的栄養支援プログラム」があり、「フードスタンプ」(ETB)と呼ばれているカードが発行されている。それは農務省が発行する金券の一種で、一般の
スーパーマーケットで使用でき、対象は食料品であり、タバコビールなどの嗜好品は対象外となっている。

1964年にジョンソン大統領が貧困対策の一つとして制度化したもので。当初は、さほど重要視されず1980年代の一時期には予算の削減も行われたが、1990年代以降、政争のテーマとしてしばしば取り上げられるようになった。貧困対策として手っ取り早く、かつ、目に見えるものであったためである。 カードによる食料需給者資格は、選挙の機会を通じて拡大するようになった。

2000年代に入ると対象枠の拡大とともに所得格差が進行したこともあり、受給者層は鰻登りに拡大して来ており、CNNテレビはその数は既に1億1000万人に達していることを伝えている。 (正確には、2013年6月の時点で、フードスタンプの受給者は 4700万人を越えていて、そのフードスタンプ受給者を含めた「何らかの栄養補助プログラムをアメリカ政府から受けている人たちが 1億人を超えてきている」ということのようである。 In Deep の記事を参照)

因みに、米国の人口3億1000万人のうち、民間企業の正規雇用者の数はおよそ9700万人であるから、食料品の受給を必要としている貧困層はその数を上回っていることになる。こうした数値を見ると、経済大国として世界に君臨して 来た米国であるが、市民生活の実体は「かっての栄華、今いずこ」となって来ていることがよく分かる。

この「フードスタンプ」に要する昨年度の農務省からの支出が1140億ドル(約11兆円)というから、財政難でデフォルトに陥りかけている政府にとって 、大きな負担 となって来ていることは間違いない。オバマ政権は早急に制度の見直しを図りたいところだろうが、生活困窮者にとっては生き死に関することだけに、そう簡単に手をつけるわけにはいかない。

実はそれを実証する事件が先日発生している。このカードが今月13日にルイジアナ州など17州で、突然、使えなくなる事態が発生したのだ。どうやら農務省のシステムに問題が発生したようである。ちょうど新年度予算が議会で紛糾して、一部の政府機関が停止している最中であったので、それが原因かと一時ネット上で騒がれる事態となったが、どうやら原因不明のまま、数時間後にはシステムトラブルは解消したようである。

 

 
 

ウォルマートでは、商品棚があっと言う間に空っぽになってしまった

 


問題はフードスタンプカードが使えなくなったことが原因で、暴動の一歩手前の事態が発生したことである。それは、
ルイジアナ州の2カ所のウォルマート が、フードスタンプでの買い物客に対し 「一時的な決済(支払い)の免除」の措置をとったところ、その瞬間から店内はこの際に買いだめしておこうと、(とは言ってもお金を払っての買い物ではないが)買いあさりで狂乱状態に突入し、結局、その2店のウォルマートでは「すべての食料品が棚からあっという間に消える」状況に至ったのだ。

一種の略奪行為であるが、現場に急行したスプリングヒルの警察署長のリンド氏は、何人かの客たちは、どんな大きな冷蔵庫でも保管することができないであろうほどの量の食糧を 、カートに積んでいたと述べている。中には、8個から10個のショッピングカートを運んでいる人々もおり、7万円相当の買い物をしていた人もいたようである。

これによるウォルマート側の損害はかなりのものとなったようだが、この件では暴力行為は発生しなかったため、逮捕者などは出なかったが、リンド署長は「客たちは手に負える状態ではなかった。まさにカオスだった」「あの光景は私がこの町で見た中で、もっともひどい光景だった」と語っている。 まさに瞬間的に発生した略奪的行為である。

この騒動の発生が新年度予算が成立せず、政府の一部業務が停止して国民から憤りの声が出ている最中であっただけに、このニュースを見た私の脳裏をかすめたのは、今後、政府が緊縮財政を迫られたり、デフォルトが発生してフードスタンプカードの使用が停止されるような事態に至った時の恐ろしい状況であった。

スタンプカードの問題は、これから先米国で発生する可能性のある暴動要因の一つに過ぎない。中国の暴動発生も恐ろしいが、米国は銃社会であることを考えると、恐ろしさは一緒である。事態の発生が日に日に近づいていることを考えると、 我々も対岸の火事と考えずに、物心両面の準備を怠らないことである。






 

 

 



 

 

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