米国・凋落の兆し(2)

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批判され始めた無人偵察機による攻撃

 


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CIA(米中央情報局)と共に米国を崖っぷちに追い込む元凶となっているNSA(米安全保障局)

 


米国の国家の威信が揺らぐ要因の一つとなっているのがNSA(米安全保障局)による情報収集問題無人偵察機による大量の一般市民殺害に対する抗議の声であることは前回記した通りである。情報収集というスパイ行為は目に見えないが、一方の無人 偵察機による殺傷事件は人の命が失われる悲惨な現場を目にするだけに、その衝撃度は大きい。

オバマ政権がアフガニスタンやイラクで「プレデター」と呼ばれている無人偵察機を飛ばし、武装勢力の一掃を図っているのは「米兵士に死者が出ない」「低コストである」という2点が評価されているからだ。特に財政難に陥っている米国にとって軍事費の削減は魅力的である に違いない。

プレデターの機体価格は一機が約450万ドル(約4億3000万円)でF22戦闘機の約85分の1、さらにモニターにより一人で同時に2機の操縦が可能であるため 、機体費と人件費が大幅に削減されることは確かだ。

しかし、戦地から1万キロも離れた米国本土のモニターに映り出される人物が、本当にテロ容疑者であるか判断することは容易なことではない。米軍は一切の情報を秘密裏にしているので確かなことは確認出来ないが、これまでにも操縦者の誤った判断で攻撃を加え、罪なき人を殺傷するケースはかなりの件数に達している ようである。

それに一旦無人機に攻撃指令を出せば、攻撃の対象者がどこにいようがお構いなく攻撃が仕掛けられる。そして攻撃目標の周囲にテロリストと何ら関係のない人々、子供や女性がたくさんいようが関係ない。だからこそ、罪のない多くの市民が殺傷されるケースが多発しているのである。

国連の調査チームが今月まとめた中間報告によると、プレデターの誤った攻撃によって発生した死者の数はパキスタンで400人、アフガニスタンで 31人、イエメンで11人となっている。突然コンピューター操作で飛ぶ無人機がやって来てミサイルを発射していくのだから、市民にとっては避難のしようがない 。それだけに偵察機に対する恐怖心が大きいのは当然である。

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モニターとミサイルを装備した最新の無人偵察機プレデター。 攻撃指令を出す
担当者が精神障害を発病するケースが多いのは、ミスジャッジがいかに多いかを物語っている

 

今回訪米したパキスタンのシャリフ首相が オバマ大統領に対して、無人機による攻撃で多くの市民が巻き添えになって死亡し国民を激しく動揺させていることを伝え、即時中止を強く訴えたのはそのためである。当事国だけでなく、国連をはじめ世界の人権団体から国際人道法に違反していると、米国政府の戦闘行為を非難する動きも出始めている。

自らは人的な被害がなく、遠隔操作によって攻撃するこの方法は、卑怯で非人道的な戦術である。だからこそ、モニターの前で判断と攻撃を指示する操作員の間に、精神患者が多発しているのではなかろうか。

操作員は米国で家族と暮らしながらCIAの対テロ・センターに行き、頭上のモニターを見ながら攻撃指令を出しているのだ。人を殺傷することが日常化している現地での戦闘行為でない分、判断ミスが操作員に与える精神的負担が大きいのは当然である。

オバマ大統領は報道陣に対して「ミサイルなどに比して精度が高い分誤爆は少なく、テロ対策として有効に使われている」と 反論しており、シャリフ首相の抗議に対しても、お茶を濁したような回答しかしていない。

しかし、対テロ・センター 内のモニターで無人偵察機から送られてくる画面を頼りに、テロリストと断定している方法が正確だとは言い難いことは確かだ。だとすると、 大統領の言うところの「ミサイルの精度」が高いことなど、さして意味を持たなくなってくる。

だからこそ、その手法を疑問視する声が国連や人道団体から噴出して来ているわけで、これから先、世界的な世論の反発が高まってくると、米国は 世界中からさらに目の敵(かたき)にされることは必至である。それは一段と覇権国家・米国の権威を傷つけ、世界からの信頼感を失わせることに なる。

しかし、第2次世界大戦において国際法を無視して広島、長崎へ原爆を投下し、女性や子供を含む一般市民30万人も死に至らしめ 、未だに一言の釈明もない米国というお国柄からして、300人や400人の民間人の犠牲者のことなど意に介さないかもしれない。

我々はただ、米国国家と国民がこれ以上のカルマを積まないことを願うのみだ。

 

 
 


パキスタン上空を飛ぶプレデター

 

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