心配されていた台風30号が、史上最強の勢力のままフィリッピンに上陸。直撃を受けたレイテ島の都市タクロバンは壊滅状態となっており、サマール島など周辺の島々にも甚大な被害が広がっているようである。先月150人を超す死者を出した大地震の傷も癒えない直後だけに、フィリピン国民のショックはさぞかし大きいことだろう。
今回の台風30号はフィリピンを襲った史上最悪の自然災害として記憶されることは間違いなく、少なくとも死者の数は10,000人を超えており、これから先、通信が途絶えている地域の被害状況がはっきりしてくれば、数万人の規模に達することになりそうである。
これほどまどに被害を大きくした要因は二つ。895hpaという超低気圧と海からの風速100mを超す暴風雨である。これまでに記録されている世界中の熱帯低気圧(台風、ハリケーン、サイクロン)の中でも風速105mは最大級。これでは、先日「フィリピンを襲う超超弩級の台風」に掲載した窓に板張りをしていた家も、ひとたまりもなく吹き飛ばされてしまったのではないだろうか。お気の毒なことである。
その超低気圧と風速105mの二つが重なって発生したのが、前代未聞の高潮である。高潮は海岸沿いの家々の2階の窓を超えるまでに達し、海岸を離れようと避難する人々は胸の高さの海水の中を、子供を肩の上に乗せながらまるで泳ぐようにして逃れていく。
その姿を見ていると、三陸海岸一帯を襲ったあの津波の場面が彷彿され、胸が締め付けられるようであった。島には避難するほどの高台がない分、住民の数の割に死者の数が多く、建物も台風通過エリアのほぼ80%が全壊状況となっている。高潮は津波と違って押し寄せては退く波の強さは弱いものの、粗末な木造立ての建物は、強風と押し寄せる高潮でひとたまりもなかったようだ。
今年の台風では、我が国でも伊豆大島などで数十名の死者を出す被害が発生しているが、それに比べ被害の規模はなんと3桁違いの大きさである。数万人規模の死者と数千棟の家屋の崩壊はまさに東北大震災クラスである。
☆
明日は我が身、我が災難
台風の到来が予知されながら、避難する場所も手段も持たないまま、被災され亡くなっていった人々。都市や村落のほぼ全ての建物が全半壊し、住む家はおろか、食料を求める店舗、一時避難する施設もないことを考えると、茫然自失の人々は大島や東北地方の人々以上に悲惨な状況に直面しているといえるかもしれない。
さっそく米国を始め、イギリス、ドイツなど国際社会からの支援や救援隊の派遣が始まろうとしている。我が国から国際緊急援助隊が今日にも出発、支援物資も早々に届けられることだろう。我々もユニセフやWFP、国境無き医師団等を通じて、出来うる限りの支援をしたいものだ。それと併せて、島の所有権でもめている隣国中国がどの程度の支援をするのかを見ておきたいものである。
今夜半上陸するベトナムなど南アジア各国における被害が少ないことを念じるのみだ。
これから先は、全ての国、全ての国民にとって明日は我が身である。来年以降、我が国に上陸する台風が、今回の30号台風を上回る被害をもたらさないという保証はない。このところ東京直下地震を予知するかような震度4〜5クラスの地震も頻度を増してきている。心の準備は怠りなくしておきたいものである。
☆