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先の新年度予算と債務上限問題での茶番劇で、世界の笑い者となった米国。友好国からの信頼を失ったこの時期をねらって、中国とロシアがこの時とばかりに大物顔で外交戦略を展開し始めている。
世界の覇権国家としての権威と威信を失いつつある米国に、追い打ちをかけるような新たな問題が発生してきている。内にあってはオバマケアと呼ばれている「医療保険制度」の発足に当たってのネット登録のトラブル発生である。医療保険改革はオバマ大統領の威信がかかっているだけに、トラブルが長引くようだと大統領だけでなく、米国国家そのものの威信が失われることになる。
国外からはさらにやっかいな問題が発生している。NSA(米安全保障局)による情報収集問題と無人偵察機による大量の一般市民殺害に対する抗議の声である。どちらも失いつつある米国への信頼と尊敬の念を大きく傷つけるもので、米国国民にとって見逃せる代物ではなさそうである。
今回は、先ず世界を揺るがしている情報収集問題について記すことにする。
スノーデン元CIA(米中央情報局)職員の暴露がきっかけで明らかとなったNSA(米安全保障局)による情報収集問題について、これまでロシア、中国をはじめ、インド、ブラジル、アフガニスタン、イラク、イラン、パキスタン、サウジアラビア、フランス、ドイツ、イタリア、メキシコ、中南米12カ国など多くの国が米国に対して抗議を行ってきた。
いったん収まりかけたかに見えたこの違法情報収集の問題が、スノーデン氏によってもたらされた新たな情報によって、ここに来て再び大きく取り上げられるようになってきた。フランスの日刊紙ルモンドがフランスの実業家、政治家、公務員、一般市民など数万人の個人情報がNSAによって収集されていたことを報道したのは、数日前のことであった。
フランスの外務大臣が米国に対して強い抗議声明を発表した2日後の23日、今度はドイツのメルケル首相が直接オバマ大統領に電話で直接真相を問いただす事態となった。それは、メルケル首相の携帯電話の会話内容がNSAによって傍受されていた可能性が高まったからである。
オバマ大統領は否定したようだが、メルケル首相が直接電話で抗議するということは、それだけの裏付けがドイツの情報機関の手に渡ったことを意味しており、メキシコのカルデロン大統領やブラジルのルセフ大統領の個人情報収集と共に、こうした国家レベルのスパイ行動はもはや隠し通せない状況になってきたようである。
インターネットの情報の99%が世界中の海底に廻らした光ケーブルを経由しており、技術大国アメリカがここから情報を収集することなど朝飯前の仕事である。そうした行為が米国の計画的な謀(はかりごと)であり、情報収集の要(かなめ)となっていることは、3000億円近い膨大な金額が投入されて造られた巨大情報センター(下の写真参照)の存在が裏付けている。
なんと言っても世界を驚かせ米国の品位を疑わせることになったのは、情報収集の対象国が敵対関係にある、ロシアや中国、イランといった国々やテロ活動の盛んなアフガニスタンやイラク、パキスタンといった国々だけでなく、フランスやドイツ、イタリア、メキシコといった友好国、それもテロ行為を防ぐために情報交換を頻繁に行っているドイツやメキシコのトップの個人情報まで収集していことである。
フランスのテレビ・F2局が「米国にはドルとトマホークミサイル以外には友人はいないと言うことだ」と伝えていたが、どうやら多くの国々がそれを感じ始めているようだ。それにしても日本という国は、抗議をするどころか、情報が収集されている事実すら知らないのだから、なんとも情けない国である。米国の属国と言うより、ハワイより遠く離れた米国国旗の星の数に入らない一つの州と位置づけられていることを、甘んじて受け入れているのだから仕方ないのかもしれない。
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