ガソリン価格の高騰がもたらすスタグフレーション
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原油の先物価格が高騰し欧米などでインフレへの懸念が高まって
来ている一方で賃金は上がっていない。 |
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デフレとは「デフレーション」の略で、私たちが普段買っている日用品等の物価が下がる現象をいう。今世界に目をやると、そうしたデフレーションとは反対の
「インフレーション」への懸念が高まってきている。米国では原油先物価格が1バーレル当たり82ドルを超え7年ぶりの高値まで跳ね上がっており、我が国でも1リッターあたり
162円と7年ぶりの高値になっている。
またヨーロッパではフランやスペイン、ドイツなどで、ガソリンや軽油だけでなく電気料金も上昇し、暮らしへの影響が懸念され始めている。
アジア各国でも同様な現象が起きており、中でもインドでは野菜価格まで高騰し、トマトの価格が20ルビから60ルビへ、ジャガイモは12ルビから20ルビへ急騰し一般市民を苦しめている。
何故、今こうしたインフレ現象が世界的規模で起きているのかというと、コロナ禍が落ち着いてガソリンや軽油の需要がこれまで以上に増してきているというのに、サウジアラビヤ、ロシアなどの産油国がコロナ禍で減産した状態を維持し
続け、増産を止めていることが要因となっているようである。
先日、ロシアとサウジは11月の増産はしないと発表しており、両国は今回のコロナ禍を利用して高騰した石油価格をこれから先もそのまま維持しようとしている
ようである。
そうした状況下で起きようとしているのが「スタグフレーション」と呼ばれる現象である。「スタグフレーション」とは「景気の停滞」を意味する「スタグネーション」と物価上昇を意味する「インフレーション」を組み合わせた言葉である。
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「スタグフレーション」とは景気の停滞時(スタグネーション)に
起きるインフレーションのこと。
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それは私たちがこれまでに耳にしたことのない言葉であるが、通常、景気が停滞すると需要が落ち込むことから「デフレ」(デフレーション・物価の下落)が発生することになるのだが、今回は原油価格の高騰によって「不景気」なのに物価が上昇する「インフレーション」がおきていることから、
景気の停滞(「スタグネーション」)と物価の上昇(「インフレーション」)を合わせて「スタグフレーション」と呼ぶ現象が発生しているのである。
この「スタグフレーション」は賃金が上がらないのに物価が上昇することになるため、労働者にとって危機的状況の到来を意味することになる
だけに大変だ。マスコミはこうした事態をあまり取り上げようとしていないが、この「スタグフレーション」と呼ぶ危機的状況が今、世界的規模で広がろうとしているのである。
こうした異常な状況がなぜ発生しているのかというと、コロナ禍で賃金が上がらない中で労働者不足による作業の遅れや天候不順などによる供給網の混乱や品不足などが重なっているためであるようだ。先般、国際通貨基金(IMF)は今後の世界経済の見通しについて、2021年の世界の成長率を7月の予測から0.1ポイント引き下げ5.9ポイントへと下方修正し、今後も「景気は悪化方向へと傾いている」と発表している。
となると、これから先景気が悪化する中で物価が上昇するという「スタグフレーション」と呼ばれる厳しい状況が世界的に発生することになるかもしれない。まだ我が国ではそうした兆候は顕著になって来ていないが、遠からずして実感することになるかもしれないので、頭の隅に入れておいて頂きたいものである。
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原油と共に天然ガスの価格も高騰して欧米やインドなどでは物価が急騰し、インフレへの懸念が高まっている。
その一方で賃金が上がらなければ労働者の暮らしは厳しくなるばかりだ。
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