2000キロを旅する
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名前の「アサギ」を字引でひくと「緑がかった薄いあい色」と記されている。
そんな色彩の品のいい美しさで見るものを魅了する。
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翅(羽根)の裏側の色は茶系である。
吸密している花はキク科のフジバカマ。アザミなどの密も吸う。
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前回「2000キロを旅するアサギマダラの不思議な力」において、「旅する蝶」と呼ばれているこの蝶は非常に長い距離を飛ぶことで有名で、日本から台湾や中国本土まで2400キロ以上飛んだという記録も残されていることをお伝えした。そしてそれだけの距離を飛べる理由の一つとしてアサギマダラの体は毒を帯びており、
旅の途中で鳥などから攻撃されることがないためであることも記した。
しかし、海を渡っている時には翅(はね)を休める場所がそんなにあるわけでないのに、なぜ数百キロ、数千キロを飛び続けることが出来るのだろうか?という疑問が残った。そこでアサギマダラが持つ超能力について少し調べてみることにした。参考にした本は栗田昌裕氏が書かれた『謎の蝶アサギマダラはなぜ海を渡るのか』(ベスト新書刊)であった。
どうやらアサギマダラは春には北上の旅をし、秋には南への旅をするようである。栗田氏は福島県のデコ平にあるスキー場で放ったオスのアサギマダラを御自身で63日後に881キロ
南下した大分県の姫島で捕獲しており、翅(はね)の状態を調べた結果、明らかに破損が生じており、長旅の苦労がしのばれたと記しておられた。
またアサギマダラは長距離を飛ぶというだけでなく、その速度も信じられないぐらい早いようである。鹿児島県と沖縄の間にある奄美大島の西に浮かぶ喜界島
(きかいじま)から11月5日に放たれたアサギマダラが11月9日に宮古島のさらに南に位置する石垣島近海の黒島で発見されており、その間の距離は778キロメートル。
放ったのは5日の午後の4時近くで、アサギマダラは夜には飛ばないので実際の飛行日数は4日程となる。となると1日の移動距離は200キロ近くになる。飛行した4日間は特に風が強い状況ではなかったので普通の気象条件でその位の距離を飛ぶことが出来るようである。
また、栗田氏自身の体験として、2008年10月12日、愛知県の東幡豆町(ひがしはずちょう)の三ケ根山でNHKの番組の撮影中に同行した家族の一人が捕獲した蝶にマーキングして放ったところ、12月3日に台湾の桃園県香光山寺で捕獲されたようである。この蝶は国境を越え52日間1880キロの旅をしたことになる。このケースでは1日間の飛行距離は36キロとなる。飛行距離が長いため1日の飛行距離が短くなっているようである。
こうした飛行例を考えると、前回、日本から台湾や中国本土までの2400キロ程の長距離を80日間で移動した記録が残されていることを記したが、途中の島々でゆっくり滞在し翅を休めながら飛行したとしても
、それだけの日数があれば十分に移動できることが分かる。
ただ不思議な点は島と島の間の海上を飛ぶ際に、どうやって翅を休めるのだろうかという点であった。海上を移動中の船にアサギマダラが飛来したという話しも少なからずあるようなので途中での休憩
が必要なことは間違いない。
地図で調べてみると300キロ離れた奄美大島と宮古島の間には幾つかの小島が存在しているが島と島の間には100キロ近く離れたケースもある。となるとその間は、翅を開いて波の上に乗って休んでいたということになってくる。
これは私の推測であるが、身の軽いに蝶とって海上の大きな波は木の葉の上に止まるのと変わらないため、大波の上が一時の休憩場所となって
いて次々と波を乗り移っているのではないだろうか。それにしてもあの小さな蝶が持つ超能力の凄さには本当に驚かされた。どうやらアサギマダラは小さな虫けらなどではなく、「人間と同じ心と頭脳を持った優れた存在」ということになってくるようである。
こうした驚異的な飛翔力を備えたアサギマダラは、アゲハチョウの様に細かく羽ばたかずふわふわと飛んで、人をあまり恐れないので人気があり撮影するのも比較的楽である。そうしたことから、日本昆虫学会で「国蝶」に選定されることになったようである。
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幼虫も色鮮やかである。
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奄美大島伊南に生息する「リュウキュウアサギマダラ」。
本土のアサギマダラに比べると翅(はね)の模様も色合いもだいぶ違っている。
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その住まいは群馬県の東吾妻町
(ひがしあがつまちょう)であったので、蝶が捕獲された北杜市とは80キロ程離れており、標高は捕獲された標高1000m程の山中と比べると400mほど低い場所であった。どうやら、このアサギマダラは群馬県から標高差400m、距離80キロ離れた八ヶ岳山麓にたどり着いたようである。
そんな話を聞いた私は早速ネットで調べてみたところ、どうしたアサギマダラはこんなに長い距離を飛ぶことが出来るのだろうか?
調べてみると、その第一の理由としてこの蝶は毒を持っていることが挙げられていた。アサギマ
ダラの幼虫が食べる草の葉と成虫が好んで吸うカラタチの花の蜜には毒が含まれているため、
また、成虫の寿命そのものが4〜5か月と蝶としてはかなり長く、その分長い時間にわたって飛ぶことが出来ることや更に、風に乗って飛ぶのが上手であることもその要因の一つとなっているようである。いずれにしろ、体長が10センチにも満たない小さな蝶が我が国から日本海を渡って台湾まで飛ぶことが出来るのは驚きである。
。なんともはや不思議である。 どうやら野鳥や蝶たちには人間にはない超能力が色々と保有されているようである。
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